CUSTOMERS
困難を乗り越えるきっかけを与えてくれたお客様に感謝。
不条理が嫌いで、負けず嫌い。自分に絶対的な自信を持っていた井上が初めて経験した創業期の挫折。
アースケアがお客様を最優先に考えるようになった理由が、ここにあります。
時代を先取りしている自負。
目標に向かってまっしぐら。
私が化粧品を生涯の仕事にしようと決断した理由は、
「経営に込める想い」にある通りです。
ビジネスをする上で、化粧品ほど自分の想いにマッチするものはありませんでした。さらに、創業時の2000年は今のように大手ECサイトもなかった時代です。店舗がなくてもインターネットを通じてたくさんのお客様に商品をお届けできる。絶好のチャンスだと思いました。
化粧品の開発・製造に協力してくださる職人さんを探す傍らで、私はパソコンと一緒にホームページの専門書籍を購入しました。「アースケアの商品をインターネットで販売する」。その目標に向かってまっしぐらです。パソコンを置く場所もなかったので、段ボールの上に置いて一心不乱に作業をしていました。
納得のいく商品開発ができ、ホームページもついに完成しました。本をめくるような構成で、商品購入画面にたどり着くのに8ページもかかるものでしたが、それでも大満足でした。
商品が売れない…。打ち砕かれた自信。
当時の私は「自分が良いと思うものをインターネットで販売すれば売れる」と思っていました。結果は惨敗でした。
毎日少しずつ売上は立っていましたが、先行投資した金額、日々の生産・販売活動を補うには全く足りませんでした。日々減っていく貯金。不安で眠れない日が多くなり、昼には化粧品の仕事をして、夜にはホテルの洋食レストランでのアルバイトに入りました。体をクタクタにしないと眠たくならないのです。睡眠は3日一度、ほんの少しだけという生活が続きました。
正直なことを言うと、起業するまでの人生は成功の連続でした。たとえ勉強ができなくても、自分が培ってきた経験をもとに勝負すれば誰にも負けない。事実、どんな仕事でも持ち前のアイデアと知識欲、営業力を強みに成果を出していました。「自分はできる」。
当時の自分には、お客様目線が決定的に欠如していました。
もう駄目だと思った時、
そばにいてくれたのはお客様だった。
「このままいったら倒産かもなぁ…」。もういっそのこと、お客様に赤裸々に話をしてしまおうと決意しました。
少ないながらもアースケアの商品をご愛用いただいているお客様がいらっしゃったので、定期的にメールマガジンを送っていました。そのメルマガの中で、会社の経営状況、今のままでは販売を継続できなくなる可能性があることを率直に伝えました。
こんな話をしたらお客様は離れていってしまうだろうと思っていたのですが、結果は真逆でした。
「アースケアさんを応援しています」
「あきらめないで」
「私が10本買うから」
「友だちにも紹介しておくから」。
次々と激励の返信が届いたのです。心が震えました。
同時に、今までの自分は独りよがりで、お客様と心の通ったコミュニケーションを取っていなかったことに気づかされました。
「自分たちを支えてくださるお客様を裏切るわけにはいかない」。
今でもそう強く思うのは、この経験があったからです。
不思議な出会いと、
ピタッとハマったパズルのピース。
お客様としっかり向き合うために、私はマーケティングの勉強を始めました。当時はまだマーケティングという概念すら定着していない時代でした。本屋さんに行っても、書籍は数えるほどしかありません。そんな折、たまたま知り合った方が著名なマーケーターでした。私はその方のすごさを知らなかったため、風変わりなおじさんだとしか思っておらず、「この人は肝心なことは教えてくれないなぁ」とさえ感じていました。実は私に知識がなかっただけで、今思えば恥ずかしい限りです。
その方のアドバイスがよく理解できなかったため、少ない書籍の中から一番分かりやすい本を選んで購入しました。すると、アースケアのホームページや販売活動に改善すべき点がたくさんあることが分かりました。実にその数200以上。全ての施策が有効かどうかは分からなかったですが、しらみつぶしのように1つひとつ改善していきました。すると、少しずつ売上が伸び、手ごたえを感じられるようになってきました。
もう一人、アースケアの歴史に欠かせない方がいます。牛乳屋さんです。化粧品とは全く関係ない業界の方なのに、なぜか私をすごく応援してくださいました。一番経営が苦しい時に1000万円も用立ててくださったのです。本当に感謝しかありません。よく飲みにも誘ってくださり、ある時、「一回うちの牛乳屋の仕事を見てみるか?」と言っていただきました。
実際にその仕事ぶりを見て、本当に目からうろこでした。その牛乳屋さんは、マーケティングの本に書いてあったことを誰にも教わることなく、ごく自然に実践されていたのです。これこそがお客様商売の神髄だと気づかされました。
この時です。自分の中で、パズルの最後のピースがピタっとハマる音がしました。「あぁ、きっとこうすれば、お客様に喜んでいただける」。ホームページはまだ8ページ構成のままです。その最後の8ページ目に、お客様に対する思いを込めた言葉を3行書き足しました。その直後から、アースケアの商品をご購入いただけるお客様が劇的に増えました。
困難を極めた創業期から、成長期へと転換する。さらには人生における価値観すらも大きく変わる。パラダイムシフトを迎えた瞬間でした。
お客様とだけ向き合いたいから、
アースケアは上場しない。
アースケアの株は全て私が保有しています。独り占めしたいという訳でなく、そのほうが純粋にお客様とだけ向き合えるからです。
上場すると会社は株主のものになります。すると、「株主にどう評価されるか」のほうがお客様より優先順位が高くなってしまうのです。体面上はお客様のためと言っていても、実態は全くお客様の方を向いていない会社をいくつも見てきました。
会社の経営拡大を優先するならば上場は避けられない選択だと思います。ただ、それと引き換えにお客様とまっすぐ向き合えなくなるなら、私は無理に規模を拡大せず、等身大のアースケアのままでいたいと考えています。
お客様には何でも正直に、赤裸々に。
また、当社では毎週金曜日にインスタライブを開催しています。お客様の生のお声をダイレクトに伺いたいからです。
以前、新しく販売する商品を「5000円です!」とインスタライブで自信満々に告知してしまったことがありました。販売開始を間近に控えて最終見積もりを確認していた際に、どう考えても6800円はしてしまうことが分かりました。当初は主要成分を3つで考えていたのですが、より良くするために途中で5つに増やしたことをすっかり忘れていたのです。
しまったなと思いつつ、そのことも正直にお客様にお伝えしました。するとお客様から「良い商品なら、値段を上げてもいいんじゃないですか?」「誰も文句言わないですよー!」と言っていただきました。お客様にアースケアのスタンスが伝わっているんだと気づき、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。
でも、結局その商品は5000円のままで販売することにしました。これは幼少期から続いている私の「負けず嫌い」が、まだ少し残っているからだと思います(笑)